色々な意味合いや物語を感じさせる古典はさながらスタンダードなJAZZのよう。
百人一首にもいくつか好きな歌がある。それこそ言葉そのものの流麗さや美しい調べもあるが
そのフレーズに幾重ものイメージが浮かんでくる様を楽しむのが好きだ。
御垣守(みかきもり) 衛士(ゑじ)の焚く火の 夜は燃え 昼は消えつつ ものをこそ思へ
大中臣能宣
篝火の灯りに揺らめく心、刹那的に「作りこまれている」歌であるけども、酔わされてもいいな、と思える。
風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ 砕けてものを 思ふころかな
源重之
同じ恋への悩みでも更に激しく熱い。似たようなスタンスの女性歌人の歌の湿った風情と比べると、
実のある切なさというのがリアルに伝わってくる。泣き節はどことなく嘘っぽさを感じてしまうからか。
秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ
左京大夫顕輔
古語では「影」は「かがよう」が語源だそうだ。つまり影だけではなく「光」もセットだった。
いつくらいから影は影でしかなくなったんだろう。
見えぬ真理を照らす影をこの歌から思う。
あなたの心を今照らしているのは何ですか?
光にせよ影にせよ、惑う足元を照らすものであればいいと願います。
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